2025年03月:職業スパイに向く人向かない人:岡田斗司夫氏の4タイプ診断に見るスパイ適性の有無

スパイニュース解説記事

岡田斗司夫氏の4タイプ診断に見るスパイ適性の有無(SPY-NE026)

スパイのシューカツ始まる

 皆さんは「スパイ」と聞いてどのようなイメージを持たれますか。今年もスパイのシューカツの季節がやってきました。実は、スパイほど人によって向き不向きが明確になる職業は珍しいでしょう。

 ある者はスパイに就職して、数々の高度情報を入手し、世界各国の「情報機関」から一目置かれる「スーパースパイ」に成ります。天井知らずの出世と高給が約束され、官僚の最高位に到達することもあります。

 一方、スパイに就職したにもかかわらず、情報収集や諜報工作というスパイならではの業務にほとんど携わらないままの「凡庸なスパイ」もいます。役所勤務らしくデスクワークに追われ、出世と縁がないままスパイ人生を終えます。

 スパイは全員、公務員でありながら、民間企業と何ら変わらない出世競争が繰り広げられ、待遇に明確な差が付くのです。

増員を繰り返す「情報機関」の新規採用者の獲得

 シューカツの季節を迎え、日本の「情報機関」では、新規採用者向けの業務説明会が始まりました。

 日本の「情報機関」は近年、増員傾向にあり、例えば、内閣情報調査室は、2005年時点で約170人でしたが、2018年時点では、194人とされ、約14%の増員です。

 防衛省情報本部は、2005年時点で2266人でしたが、2018年時点では2502人とされ、約10%の増員です。

 法務省定員規則によれば、公安調査庁は、2001年時点で1609人でしたが、2024年時点では、1799人であり、約12%の増員です。

 国家公務員の全体では、2000年代から2020年代にかけて、郵政民営化などでおよそ半数にまで減員されていることを踏まえると、流れに逆行しています。日本の情報収集機能が強化されている実態がうかがわれます。

スパイの本質をほとんど提示しない業務説明会

 業務説明会では、採用パンフレットが配布され、それぞれの「情報機関」の概要、経緯、業務内容、キャリアアップ、福利厚生、採用状況など説明されるのが一般的です。これでは、他の省庁や民間企業と大差のない内容でしかなく、「情報機関」の職員がどのような仕事をしているか見当がつきません。他の省庁や民間企業であれば、顔出しや名前出しの現役職員のインタビュー記事が掲載され、それぞれの業務が詳細に紹介されます。これは、職員の身元を明かせないという業務の特殊性もあって、「情報機関」にはできません。

 「情報機関」の側も、職員の名前をイニシャルにして、顔出ししない写真を掲載したり、顔出ししても問題ない幹部の紹介記事を掲載するなど工夫しています。

 それでも、「情報機関」にとって最も肝心な「情報」については、特段の言及もなく、「スパイの組織」というイメージを与えないよう配慮されています。

 今も昔も、「情報機関」の業務説明会は、当たり障りのない内容に終始するという本質に変わりありません。

業務説明だけでスパイ適性は測れない

 実は、「情報機関」は敢えて、当たり障りのない内容を業務説明で繰り返すようにしています。将来のスパイ候補生を集めるに当たっては、最低限の適性の有無を見定めるくらいに過ぎず、それ以上を見抜くことが困難なためです。

 スパイという職業は、目に見えず、触れることもできない情報を取り扱います。その情報は、人から人へ伝わる性質のものであるため、情報を入手するためには、人間と向き合うことが不可欠です。つまり、いかに多種多様な人間関係を構築できるかこそ、「スーパースパイ」又は「平凡スパイ」の分かれ道となります。

 人類最古の職種に数えられるスパイの長い歴史ですら、人間関係の構築に成功する方程式が確立されていません。頭脳明晰であれば必ずしも良いとされないため、学歴や試験の成績で事前に適性判断できません。「情報機関」には、公務員試験の合格者でなく、試験勉強を経ていない縁故採用者が大半を占めた歴史があります。その上で、学歴や試験に秀でていない者の中から、国益の確保に欠かせない高度情報を入手する「スーパースパイ」が誕生しました。

 故に、業務説明においては、スパイとしての適性を事前に判断するよりも、認知とイメージを向上させることで集客を見込める内容になるわけです。

スパイを職業とするために求められる適性

 スパイとしての適性が判断されるのは、採用後からの現場勤務においてです。新人スパイは、研修を受けると、情報収集を担当する現場に配属されますが、同時に、スパイとしての適性判断が始まります。

 実際に、人と会って、会話して、関係を構築するという作業を繰り返す日々となります。スパイの究極目標は、敵対する個人との関係構築ですが、新人時代は、あらゆる個人との関係構築を訓練させられます。これは、組織外部に限った話でなく、上司や同僚といった組織内部であっても同様です。あらゆる個人といかに付き合うかという一点のみで適性判断されるわけです。

 一定期間の適性判断を経ると、スパイとして現場で情報収集を継続できるか、それとも現場から引き上げられて情報収集以外の業務に異動させられるかが、組織内部で判断されます。

 そして、一度現場から引き上げられると、スパイとしてのキャリア形成が途絶えてしまい、役人ならではのデスクワークの日常勤務が待っています。

スパイ適性にある極端な偏り

 スパイとしての適性を見定めるには、採用から少なくとも5年以上の歳月を要します。「情報機関」の中には、新人スパイや若手スパイを育成するための研修が行われています。採用後間もない頃に新人研修が開催され、それから5年余りが経過すると、若手研修が開催されます。この若手研修までは、様々な現場で情報収集に明け暮れて、繰り返し適性が試されます。

 二度目の研修が終えることで一人前のスパイとされますが、同時に組織から、スパイとしての適性が大まかに見定められ、現場からの異動人事が始まります。

 スパイとして使い物にならないと判断される頃には、ある程度の年齢になっています。例えば、大卒の22歳でスパイに採用されたとして、適正判断が終わる頃には28歳を過ぎています。大学を浪人や停年すれば、30歳を超えることも珍しくありません。

これでは、スパイを諦めて転職しようにも年齢的に有利と言えず、組織に残ってもキャリアアップを見込めないという八方塞がりになりかねません。

岡田斗司夫氏の「4タイプ診断」が示したスパイ適性

 ここで、岡田斗司夫氏の著書である『人生の法則 「欲求の4タイプ」で分かるあなたと他人』を紹介します。

 著書の紹介文によれば、「人間の欲求を4タイプ(司令型、理想型、注目型、法則型)に分類。タイプ判定テスト付きで、タイプごとの傾向と対策を解説する。自分や他人の「したいこと」がわかるから、人間関係がスムーズになり、人生の目的が見つけやすくなる」とされます。

 本著が示した4タイプの分類から、自分や他人の欲求を理解することで、自分や他人との関わり合い方を理解することが可能になります。どのような人間が付き合いやすいか、又は付き合いにくいかという傾向も分かります。

 人間関係の構築を至上命題とするスパイにとって、自分と他人との関わり合い方を理解することが必須であり、4タイプのどこに位置するかで、スパイとしての適性も把握可能です。実は、スパイ稼業に長年従事している者たちは、特定のタイプに集中し、スパイ失格と判断された者たちも特定のタイプに集中しています。どの分類に属するかで、スパイとしての適性までも端的に示しています。

最もスパイ適性の高い「勝つことが至上命題な人々」である「司令型」

 司令型は、勝つことに最大の価値を見出し、そのためには努力を積み重ね、手段を選びません。これは、スパイにとって最大の美徳であり、何よりも結果のみを重視し、プロセスを一切顧みないことは、国家と国民の存亡を賭けた高度情報を入手する上で最適と言えます。

 また、司令型は、他人との関係性を敵か味方か、上か下かという分かりやすい二元論で見て、他人の上位に立ち、指示を出して思うように動かすことに、欲望を見出します。スパイが高度情報を入手する上で必要となるのは、いかに情報源を自分の思うように動かすかという素養です。スパイは、情報源との人間関係を構築しますが、その関係性は、互いに対等な関係であったり、下位に立ってお願いする関係であったり、上位に立って指示を出す関係であったりと様々です。

 司令型のスパイは、情報源の上位に立つ関係性を好み、情報源をあたかも自らの手足として扱い、自分の指示に基づいて情報を入手させることを徹底します。これが、多くの有力な情報源を作ることにつながるため、高度情報の入手に最も近づきやすいと言えるが司令型のスパイです。

スパイ適性の高い「仮説を立てるのが大好きな人々」である「法則型」

 法則型は、物事の仕組みや成り立ちを理解することに最大の価値を見出し、そのためには、あらゆる仮説を立てて分析を繰り返すことを厭いません。これは、スパイにとって望ましい美徳であり、個々の情報について、どこまで本当と信じられるかという分析を行う上で最適な思考と言えます。

 法則型は、自分の主観に囚われず、物事を一歩引いたところから客観的に眺めることが得意です。スパイの任務は主に、現場における情報収集と内部事務における情報分析に大別されますが、情報分析では、個々の情報について様々な角度から仮説を立てて、何度も検証を繰り返すという素養が求められます。

 高度情報は、現場で入手された時点だけで判断できず、分析を加えることで初めて判断が可能となります。逆に言えば、スーパースパイが情報を入手しても、これを高度情報と判断できる分析が下されなければ、高度情報は完成しません。情報収集と分析は常に表裏一体であり、「スーパースパイ」の活躍を陰で支えるのが、法則型のスパイです。

スパイ適性の低い「自分の情熱が何より大事な人々」である「注目型」

 注目型は、注目されて認められるムードメーカーであることに最大の価値を見出し、そのためには、他人を世話したり、楽しませようとして良好な人間関係の構築を喜びます。これは、スパイにとって必ずしも望ましいと言えず、むしろ忌避すべき性質です。

 スパイは、決して目立ってはならず、ましてや注目を集めるような言動は許されません。スパイであると見破られないようにする点で、自分が他人からどう見えているかを把握することが重要です。ただ、これはあくまで、他人から承認を受けるためではありません。

 また、注目型は、良好な人間関係を構築しようとしますが、スパイが必要とする人間関係には、必ずしも良好なものが求められていません。スパイと情報源の関係性に求められるのは、和気藹々な雰囲気ではありません。どちらかと言えば、司令型が好むような上下関係がはっきりし、指示に従わない場合は、厳しく接するという殺伐とした雰囲気です。

 自らの存在を秘密にできず、情報源を自らの意のままに動かすことができないという点で、高度情報の入手があまり見込めないのが注目型のスパイです。

最もスパイ適性の低い「結果よりもプロセスを重視する人々」である「理想型」

 理想型は、自分の理想を追い求めて、誰からも指示されず、自分の考えに従って行動することに最大の価値を見出し、そのためには、結果よりもプロセスを重視します。

 スパイの世界では、高度情報の入手のみを求められるという徹底した結果主義が採用されており、情報入手できないスパイは、組織から不要と判断されて、情報収集から外されます。情報を入手するためには、身分を偽装して、あらゆる虚偽を用いて、情報源と接触することから、こうしたプロセスでは、手段を選ぶ余裕など許されるはずがありません。

 また、人間関係の構築に当たっては、自分の考えを貫くことが必ずしも許されず、時には相手の考えを取り入れたり、賛成することも必要とされます。

 しかし、理想型のスパイは、高度情報の入手よりも、入手に至るまでのプロセスを重視し、自らの意に沿わないような虚偽や卑怯なやり方を受け入れようとしません。人間関係の構築においても、自分の考えを全面に押し出して、相手の考えを認めようとせず、一方的なアプローチに終始しがちです。こうして、高度情報の入手が全くと言って良いほど見込めないの理想型のスパイです。

歴代随一と呼ばれる「スーパースパイ」は司令型に集中

 国家間の情勢を変えかねない数々の高度情報を入手してきた「スーパースパイ」は、司令型に集中しており、時折法則型にも見受けられます。注目型や理想型から「スーパースパイ」が出た事例は、存在しないと言って過言ではありません。

 情報収集の現場では、注目型や理想型のスパイが消えていき、法則型のスパイは現場から本部の分析部門へ異動するため、司令型のスパイの独壇場となります。競争心に欲望を燃やす司令型のスパイたちは、自らの功を誇ろうとして競うようにして情報収集に明け暮れるため、ライバル心をむき出しにした雰囲気となります。そして、功績の高さによって互いに序列が職場で形成され、出世や高給が決まるため、「スーパースパイ」が排出されていくのです。

 4タイプにおける司令型とは、職業スパイの本質を端的に体現した分類と言えます。

適性のないスパイたちの末路

 注目型や理想型のスパイの中からは、退職したり、退職しないまでも情報収集と関係のない業務に配置転換される者が続出します。

 司令型のスパイがひしめく現場に、一度は理想型のスパイが配属されるわけですから、司令型の上司と理想型の部下という組み合わせが珍しくありません。岡田斗司夫氏によれば、司令型と理想型は、互いに相容れない人生観を有するとされますが、スパイの職場においては、最悪の関係ですらあります。

 司令型のスパイの上司は、ひたすら結果を残すよう厳しい指導を繰り返し、理想型のスパイの部下は、結果を残すということの意味が理解できないまま、指導を受け止める日々となるわけです。こうして相互理解の見込みが立たないやり取りが行われた結果、司令型のスパイの上司は、見切りを付けて部下指導を半ば放棄し、理想型のスパイの部下は、スパイ失格の烙印が押されて、現場から去っていくわけです。

 「情報機関」の職場では、よく見られる光景ですが、スパイほど、個人の資質が適性と相関する職種は存在していないため、これは、避けようのない風物詩といって良いでしょう。

以 上

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